一人になりたくて…(卒婚という選択)

60代女性の一人暮らし。本が好き。

ブラックホール

 たしか少し前の土曜日だったと思うけど、何かを書こう!と思った。書くことで気持ちを落ち着ける。それはずっとわたしがしてきたことで、以前それはパソコンの中の秘密のドキュメントだった。その頃、わたしの部屋には鍵がかかっていて、パソコンにもパスワードがあり、そのドキュメントを開くのにもパスワードが必要だっだ。三重のロック。そうしてわたしは自分を守り、気持ちをそこに吐露して何年もやってきた。

 ひとり暮らしをするようになってプライバシーが確保されると、もう鍵はいらなくなり、そのドキュメントも開かなくなった。それでも先日のように「書いて気持ちを落ち着かせよう」と思う時がある。たまにある。先日は「note」に書いた。ただ思うままに書いてあまり読み返しもせず、それで落ち着いた。ひとりごと、という点ではこのブログも同じなんだけど、noteには詩も書いているので「表現する」ことを意識したかもしれない。

 そして、その土曜日の夜、わたしはぽっかりと寂しかった。「ひとり暮らししたい!」と宣言したのだから弱音や愚痴は言わないでおこうと無意識に決めていたかもしれない。だけどやっぱりさびしいときはある。当たり前のこと。

 最近、金原ひとみさんの「アンソーシャルディスタンス」を読んだ。すごい力作だった。夫がいて、恋人がいて、年下のボーフレンドもいる主人公はそれでもなお「この満たされなさは何だ」と自問する。「人の中には、心と体それ以外にブラックホールのようなものがあるのだろうか」という箇所を読んだ時「あーっ」と思った。すごい。なんかよく分からないまま抱えていたものを言い当てられた気がした。「それともこれは結局、誰しも人間は一人、人類皆孤独、といった手垢のついた言葉で表されるような事象でしかないのだろうか」・・・。

 わたしは金原ひとみさんの著書はこれまで二冊位しか読んでなかった。この本が話題になり図書館に予約しておいた。とても面白かったのでもう少し彼女の作品を読んでみようと思う。

 そういえば、やはり話題になり借りた本「疼くひと」(松井久子さん)は、わたしにはイマイチだった。「古希を迎えた女性がsnsで知り合った年下の男に身も心も溺れていく」というキャッチコピーだったので、同じシニア女性としては興味津々。でも、どうなんだか、、脚本家としてのキャリアと経済力のある主人公の設定が自分とあまりにかけ離れていたからか、、余裕あるわね、と冷めた目で読んでしまった。結末も予測できるもので物足りない。だけど、きっと「こういう恋がしてみたい」「トシとっても恋心は忘れずにいたい」とか憧れて読む読者が対象なのだろう。それはそれでいいと思う。

 書くこと、読むこと、このふたつがあり、わたしを支えている。このふたつがあって良かったとしみじみ思う。そしてわたしの創作を待ってくれる読者がごく僅かだがいて、一緒に本屋めぐりをする大切な人もいる。そのことに感謝したい。