一人になりたくて…(卒婚という選択)

60代女性の一人暮らし。本が好き。

トマトたち

7月に風邪をひき久しぶりに熱もでた。私の場合はいつも喉からくる。

喉が痛い、咳が出る。ガラガラ声になる。

暑いときの風邪はつらい。越してきたこのマンションの一階に医院があってよかった。

ちょうど用事のあった夫がいた。

からだの弱い(風邪もひきやすい)私に比べ夫は比較的丈夫だ。一緒に暮らしていた頃、わたしがゴホンゴホン咳をしながら作ったご飯を食べても何事もなかった。

しかし、トシのせいか別居で環境が変わったせいか、二泊して静岡に戻ったとたん夫もなかなかの高熱をだして寝込んだらしい。

あら、うつしちゃったのね、ごめんね、と思いながら内心、看病から免れてホッとしたりする薄情な卒コン妻なのだった。

さて、熱もだいぶ下がり風邪状態だけれど少々持ち直してきたわたしは「なんか食べよう!」と思った。水分はシッカリとっていたけれど食欲はもちろんあまりなかった。

水分のある喉越しのよいものが食べたい。スイカ!と思ったけれど、コンビニにはスイカは売っていない。ほんの少し歩けばスーパーがありたぶん切り身のスイカはあるだろうけれど、きっとまあまあ高いしまあまあ重い。

それで思い出したのが散歩のたびに何件も目にしていた農家直販所。そうだ、トマトだ!と思った。スイカよりも栄養あるんじゃないか、しかも高くなくて重くない。

というわけで夏の日の夕方、トマトを求めてうちを出た。ところがいつもなんとなく思いつくまま小道をそれて散歩していたので直販所が見つからず、一日目はコンビニでトマトと菓子パンと牛乳を買って帰った。(コンビニはうちのすぐ近くにある)

2日目、昨日間違えた道を避けて歩いて行き、やっぱりないなーとガッカリしつつ諦めて横道を振り向いたらあった。よかったよかった。一袋200円大小混合、多少キズもあったりするトマトたちは「やっときたね」とわたしを待っていてくれた。

方向音痴のわたしはそこからうちに戻る道を一生懸命覚えて帰ってきた。

全然遠くない。なにしろトマト畑がある。覚えられた。

トマトには子どもの頃そうしたようにちょっと砂糖をかけた。塩もパラリとふった。

毎日、直販所のトマトを食べて風邪を治した。

咳は10日以上続いたが、あまりに東京の夏が暑いので、7月最終週は静岡へ。

高原なので冷房もいらないし、あれほど寝苦しかっった夜も嘘のようだ。

料理に目覚めたらしい夫(すっかり元気になっていた)がレシピを見ながらせっせと食事をつくり提供してくれた。

毎日毎日、本を読み、ゲームをし、窓から大室山を眺めてコドモの夏休みのようにのんびり過ごした。

楽しいことばかりではなく「うっ」と思う話もあるにはあった。

でもそれはそれ。先日、また東京に帰ってきた。

あのトマトたちに会いに行き大切に買って帰るのを楽しみにしている。